アントニオ・パニコは伝説的なマエストロだ。ナポリ中にその名を知らしめるサルトは彼と、親友であったレナート・チャルディくらいのものだった。アントニオ・パニコはナポリ仕立ての歴史を、友人のレナート・チャルディとは別のアプローチで開拓していった稀代の職人である。
アントニオ・パニコは幼い頃から仕立て職人の道を歩んだ。アンジェロ・ブラージやロベルト・コンバッテンテのような先代の偉大なサルトたちから学んだが早熟で、10代半ば頃にはカッティングが人並み以上にこなせてしまったという。
アントニオ・パニコは20前半で早くも自分のサルトリアをオープンしたが、ロンドンハウスに大抜擢されてマスターカッターとして活躍した。90年代に再度独立、現在のサルトリアを開いて今に至る。
彼の仕立ては言葉で言い表せないし、アントニオ・パニコ自身も語るのを好まない。よくみればその仕立ては非常にベーシックだが、男らしいプロポーションを実現するための絶妙なフィッティングと、大胆で立体感に富んだ造形が、他のサルトリアの服にはない稀有なラインを描くのである。
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